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2006年10月11日 (水)

「神坂雪佳展」を見て考えた事

高島屋で開催されている「神坂雪佳展」へ行って来た。
神坂雪佳は明治から昭和初期(1866〜1942)にかけて京都で活躍した画家、工芸デザイナーで、琳派の伝統を継承した作品を多く残している。

Img_8599_12001年エルメスの季刊誌「ル・モンド・エルメス」に彼の「八ツ橋」という版画が表紙を飾り、特集も組まれた結果、海外で人気が出て、それが逆輸入されて日本でも人気が出て来た。
展覧会の詳しい内容については、はたこさんのblogを見ていただくとして、ここで気になっている事を書こうと思う。
それは、現在人気の有る「若冲」にしても、「雪佳」にしてもその人気の火元は海外に有るという点である。
「若冲」に関してはアメリカのプライス氏、「雪佳」に関しては「エルメス」と海外の方がその「美」に気付き我々日本人に教えてくれている。これはどうしてだろう?

「若冲」の場合と「雪佳」の場合が同じだとは思わない。ここではまず「雪佳」の場合、すなわち琳派を考えてみよう。

光悦、宗達、光琳、と続いた、京都琳派も光琳死後(1716)先人が素晴らしいだけに、それを越える有能な人材は現れず、また政治・経済の中心が京都から江戸・大阪へ移り、後ろ盾となるパトロンの力も衰えて行った。その反面、1700年頃から盛んになった友禅染めは琳派の構図・模様を取り入れ商品としての琳派様式を確立していった。

琳派の持つ華麗な色調、デザイン化された構図、これらが友禅の商品性にマッチし、友禅の商品価値を高めていった。しかし、呉服という限定された大きさであったため、琳派の持つ大胆な表現力、リズム感のある構成力は制限を受け、その良さを押さえられ、琳派は過去の様式の型にはまった継承に陥り、光悦、宗達、光琳のめざした「芸術として新たな工芸」から「職人による継承の芸術」となった。そこでは、新しい表現を作るという精神性は薄れ、次への発展は見られなかった。そして、「職人の技」は芸術ではないとする芸術に精神性を求める風潮から、琳派は芸術の枠から外れたものと見られるようになった。
すなわち、京都の街が琳派を生み、それを利用し、そして芸術としては見放して行ったのである。

その頃、京都の画壇では、写実を求める応挙、呉春の四条円山派、素養としての絵画を目指す蕪村、大雅の文人画が盛んとなっている。そして明治時代となり、雪佳が活躍した時代は竹内栖鳳と重なる。栖鳳は四条円山派の写実の中にうまく西洋の手法を取入れ個性あふれた新しい日本画を作り出し、画壇の主流となった。それに対して雪佳は伝統的な琳派の様式から抜けきらず、従来の様式の中で新しい表現を作り出して行った。琳派に執着しながらも「職人の技」となっていた琳派を「芸術」としての琳派に戻そうとしたのである。雪佳の『百々世草』を見て、宗達、光琳のアレンジだと言う人もいるが、それまで時代にあったアレンジが出来なかったのが琳派なのだ。それはそれで素晴らしい事である。雪佳のあみ出した線の柔らかさ、青色の使い方のうまさはそれまでの琳派には見られないものである

では、なぜ今エルメスが雪佳なのかと考えると、先程「執着」という言葉を使ったが、この点だと思う。彼らは西洋絵画に無い何かを日本画に求めている。よって中途半端に西洋の手法を取入れた絵に対しては興味が湧かず、雪佳のように旧来の様式に執着する絵に自分の世界とは異なったジャポニズムを感じるのであろう。西洋が求める日本画の視点と我々が見る視点とは異なるのである。彼らにおいては、絵の中に美を見つけるという感覚であり、我々は美を感じるのである。これはどちらの見方が良いかと言う問題ではないが、そのような見方もあるのだという事を我々は今後認識して行かなくてはならないだろう。

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コメント

わたしも同じことが気になっていました。ル・モンド・エルメスのことを聞いたとき、また逆輸入かと・・・。浮世絵の価値が日本で「発見」されたのも、陶磁器の包み紙やクッションにされていたものがヨーロッパで見出されたからでしたね。今まで忘れきっていたとかまったく気付いていなかったものを、よそさんから言われてブームみたいになる・・・。なんとなくいやあな感じすらしてたんです(^^;。

時が経つにつれ、新しかったものも硬直化してしまう・・・。琳派の歴史もそれを逃れられなかったのですね。わたしにとっては知らないことばかりでとても勉強になりました。
ありがとうございます。

投稿: はたこ | 2006年10月12日 (木) 19時14分

はたこさんへ
いえいえこちらこそ、いつも美味しそうな話題を教えていただき、ありがとうございます。
「雪佳」さんの場合は、拙ブログのように考えましたが、「若冲」さんには別の要素があると思います。また、そのへんがまとまりましたらアップしますのでよろしく。
しかし、プライス展は見応えがありました。これもまたその感想をアップします

投稿: 好日 | 2006年10月14日 (土) 14時32分

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