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2006年11月 4日 (土)

プライスさんの「若冲と江戸絵画展」その2

さて、「若冲」だが、まずはこの絵から。

_jyakuele
伊藤若冲 「鳥獣花木図屏風」(右雙 部分)
この絵を見た時は、衝撃を受けた。明るい色調と単純化されたモチーフ、そして楽園のような楽しさ。確かに、はたこさんのブログにあるように、お風呂屋さんのタイル画を思い浮かべる。(これに富士山があればまさにお風呂屋さん!)。この絵の手法は「桝目描」と言われるもので画面を小さな網目状に分け、その一つ々に同系色の色の濃淡を付けて塗っていき立体感をだす方法である。若冲が始めたとされているが、若冲の後これを継承した絵は見ていない。若冲の描いた「桝目描」は3つある。「白象群獣図」「樹花鳥獣図屏風」そして今回の「鳥獣花木図屏風」である。その内、若冲の印章があるのは「白象群獣図」のみ(白象群獣図も印章の切り抜きが貼ってあるらしい)。今回のこの絵に関しては、その他の若冲と大きく異なるため、一部の学者の中では、若冲の作ではないとする説もある。
これら3作品を今まで見て来たが、若冲の後半の絵には、この屏風の要素はある。しかし、これは若冲一人では描けるとは思えず、そこに何らかの他の人々の手が入っていると思われる。
また、この絵には西陣の織物の下図として描かれたとする説もあるが、もしこれが西陣の下絵ならば、その大きな織物は何に使われたのか?。若冲が京都の鉾町に近い所に生まれた事を思うと、これは山鉾の懸装品のために描かれたのではないだろうか?この絵を掛けた鉾が祗園祭の日に都大路を揺れ進む様を想うとワクワクする。
なにぶん、その奇抜さのために、色々と問題のある絵だが、見ていて楽しい事は事実である。

Turu2伊藤若冲「鶴図屏風」(右雙 部分)

鶴が15羽、よどみの無い描線で描かれている。鶴のもつ伸びやかな曲線が濃淡、太細の線でサラ〜ッと描かれている。しかも、その一本の線で鶴の体のふくらみや凹凸も描いている。
これはすごい!
屏風の構成としても、向かい合う鶴のうち一匹が必ず上を向いており、もう一匹が下を向いているように取り合わされており、見る側にリズム感を感じさせ気持ちが良い。
鶴の表情も一匹ごとに異なり、愛嬌のある鶴や、怒っているような鶴や、警戒しているような鶴など、見ていて面白い。

若冲の水墨画は、一見単純そうな感じがするが、構図とか、線の濃淡等、細かい所をみるとよく考えられているのがわかる。特に後年の作品には悟りきったような感じから生まれて来る軽やかさが感じられる。

華々しく重厚な感じの着色画もすばらしいが、軽ろやかだが卓越した感じの水墨画もまたすばらしい。

Niwatori伊藤若冲「紫陽花双鶏図」

あざやかな色調、大胆な構図、「若冲の鶏」である。

濃淡交ぜ合わさった紫陽花の青、奇妙のねじれた茎、得意そうに尾羽根を上げた雄鶏、その雄鶏を無視するかの様な雌鶏、まさしく若冲ワールドである。

若冲の鶏を見ていつもはっとさせられるのは、その目である。あの目は軸なり、屏風なりをどの方向から見てもこちらをにらんでいる。八方にらみの目である。「見る者が見られている」、この感じが若冲の絵をエキセントリックと思わせる一つの要素となっている。

特に、この絵では、雌鶏の目にも注目。これは鶏の目とは思えない。言い寄られた女の人が、「ふん、あなたなんかまだなんとも思ってないわよ〜。」と思うときの目付きそのものだ・・・。若冲もいろいろあったのだろうなぁ??
なお、この絵よりも後に描かれた「動植綵絵」30幅の中によく似た「紫陽花双鶏図」がある。その絵の2羽はツガイのように見える。絵の中の鶏の世界も進展していくんだなぁ。
Washi伊藤若冲「鷲図」

若冲、最晩年の作である。

波頭、逆巻く海に突き出す木の枝から、今飛び出そうとする鷲。その足の爪はガッシリと幹をつかみ、目は先の獲物をにらみつけている。若冲最晩年にして、『まだまだ行くぞ!』という気概あふれる作品である。

鷲の羽は、若冲があみだした「筋目描」という手法で、墨を重ねずに滲ませるように描くことにより、輪郭を白く残している。墨の濃淡を使い分ける事により羽根のヴォリューム感、重ね合わさった様子を鋭く表現している。

鷲のリアル感に対して、下に描かれている波頭はデフォルメされており、その対比が面白い。
また、バックに塗られている薄墨の空の色が、鷲のもつ精悍さを強調しているように思える。

細密画に近い様な絵からはじまり、そしてこのような精神性を高めた水墨画までに至る、若冲の幅の広さを改めて感じる。

若冲のその他の作品としては、「葡萄図(プライスさんがコレクションを集め始めるきっかけとなった作品)」、「猛虎図(パンフレットとなった)」「旭日雄鶏図(ポスター)」「花鳥人物図屏風」「鯉魚図」等合計18作品展示されていた(前期・後期合わせて)。いずれもが優品であったが、若冲の作品としては人物画や野菜や虫等を描いた作品、また版画等もある。そのような意味では若冲ワールドはまだまだ奥深い。

約300年程以前、京都の錦高倉の青物問屋に生まれた『若冲』。多くのエキセントリックな絵を黙々と描き続け、85歳の生涯を終え、今、深草の石峯寺に眠る。彼の予言通りその絵は200年以上たった現在大きなブームを巻き起こし、我々に新ためてその絵の素晴らしさを知らしめている。

その3では江戸琳派を中心にまとめます。

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コメント

桝目描にはほんとに驚愕させられました。他に似たような作品が同時代にあったわけではないのに、若冲はどうやってこの表現方法を思いついたのか、多彩な動物たちをどこで目にしたのか・・・。また気になるのが縁取りの文様です。イスラム文様のようにも、じゅうたんの縁取りにも見えます。本当に不思議な作品です。

投稿: はたこ | 2006年11月 5日 (日) 22時31分

はたこさんへ
当時の京都・大阪には芸術的なサロンがいくつか有り、若冲の親しくしたサロンの中心人物の一人に大阪の「木村蒹葭堂(ケンカドウ)」という人物がいました。この人は博物学や本草学の書籍を集め、今で言う「私設図書館」のようなものを設立していました。その中には、蘭書の「動物図鑑」等もあり、象、豹、犀等のアフリカの動物の銅版画があったそうです。若冲もそれらを見て、これらの絵を描いたと考えられています。
描表装の部分に関しては、私も関心を持ってます。その点を考えると、この絵は、そのような文様があるベルギーやオランダの絨毯が多く使われている「祗園祭の鉾の懸装品」の下絵ではないのかなぁ?と思います。
でも、不思議な屏風ですねぇ

投稿: 好日 | 2006年11月 5日 (日) 23時54分

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