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2006年11月 5日 (日)

プライスさんの「若冲と江戸絵画展」その3

今回は、江戸琳派を中心に。

Imghuiti_1酒井抱一「十二か月花鳥図」(右図九月、左図十月)

酒井抱一は18世紀の中頃、大名の酒井家の次男として生まれ、後に出家し、狩野派、浮世絵等を習い、その後、光琳の画風に魅せられそれを踏襲し、江戸琳派を始めた画家である。

今回のプライス展では、この十二幅を陽の光の中で見られように、1階に別の展示場を設け南側のガラス窓から入る陽の光を障子を通して受けながら鑑賞できるようにされている。
午前中は東から差し込む光で作品にダイレクトに光があたり、色調がはっきりと浮かび上がる。
夕方に近くなると、一度反対側の壁に当たり反射してきた少し淡い日の光の中で見る事になる。
特に4時を過ぎると秋の陽は刻々と変わり、床の間風にしつらえてある壁の聚落が段々暗くなり、絵が浮き出したようになり、また絵にもうっすらと陰がかかりだし、今までの展覧会とは違った雰囲気のなかで見られた。
この様な展示方法はプライスさんの指定であったと聞くが、感謝!感謝!

九月と十月には、抱一の特徴がよく出ている。九月の菊は無駄なものを一切排除し、菊が半円を描くように絵の中を横切っている。構図の見事さと白と赤の花の対比が見事である。十月には「たらし込み」の手法で描かれた柿の木が九月と対峙するかのように、反対に向く半円として描かれ、柿の実の赤が印象的である。十二か月花鳥の中でもこの二か月が特に良かった。

Imgameuri鈴木其一「飴売り図」

鈴木其一は酒井抱一の弟子である。抱一が大名の出身であるのと比べ、其一は染め職人の出である。そのような点から、抱一とはまた違った視点から絵を描き、江戸琳派を完成させた。

この絵には「千金の商いは千金の苦しみ、一銭の商人には其日をたのしむ、あめうりの笛おきながら大晦日」と抱一の賛がある。このような庶民の絵は、抱一には描けなかったであろう。飴売りのひょうひょうとした風体、遠くを見つめる目、これらは其一ならではの筆である。

また、太く勢いのある描線は其一の達者な腕前を示している。

Imgsagi鈴木其一「柳に白鷺図屏風」

右に描かれた柳の木は、抱一仕込みの「たらし込み」の手法で描かれ、柳の葉は一枚々濃淡をつけて丁寧に描かれている。一枚の葉においても光のあたる部分と陰の部分とは描き分けられ、一つの枝においても部分々の濃淡を付けて、枝のかすかに揺れる様を表している。非常に手の込んだ描き方である。光の揺れ、風の揺れ、初夏の河辺の様子をすばらしい緻密さで描ききっている。すごい描写力である。

柳の緻密さから浮かび上がるように、白鷺はさらっと平面的に描かれている。尾羽の付け根もあえて細かくは描かずぼやけたように描ききっている。この辺は画家の感性によるものと思えるが、見る者をその画家の感性にひきずりこむ力を持っている。

其一の実力に驚かされる一枚である。

Imgame_1鈴木其一「青桐・紅楓図」

夏の驟雨の中の青桐と秋の霧雨の中の紅楓を対比させて描いている。一幅だけでも充分に素晴らしい絵であるのにそれを二幅並べる。憎たらしい程の構成である。

雨の描き方の対比、夏の驟雨は筋となり降り注ぎ、秋の霧雨は漂うように流れていく。木の描き方の対比、青桐は小さな花を咲かせ、楓は紅葉とまだ青い葉を残している。大きな青桐の葉と小さな楓の葉。紅い葉と緑の葉。絵を構成する全ての要素が互いに対比されている。

其一は単に画題の対比だけでなく、色、構成、時間等の色々な要素を対比させるような構成をうまく描いている絵が他にもある。よく考えられている絵である。

今回、里帰りした109点の絵画、プライスさんに本当にありがとうと言いたい。
特に、今までの展覧会での常識を覆す様な展示方法、ガラス越しではなく間近にダイレクトに見られる喜び、絵の本来の状況で日の光のもとで見られる楽しさ、本当に見る者にたった展示方法は今後の展覧会の在り方に一石を投じるものであろう。作品の保護の点等で色々と問題は有ると思うが、誰が絵をみることを喜ぶのかという視点を大事にしていってもらいたい。

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コメント

本当にすばらしい展示方法でした。とてもぜいたくをした気分になりました。
抱一の作品は、植物の描くラインがどれもすばらしいと思いました。シンプルかつ優美な曲線ですね。わたしも九月が一番気に入りました。

投稿: はたこ | 2006年11月 5日 (日) 22時36分

はたこさんへ
夕方、反対側の壁際におかれていた椅子にすわり、しばらくの間「十二か月〜」を眺めていました。多くの人達が前を通って行きましたが、その人影で絵が見えなくなり、人の列がとぎれて再び絵があらわれると、ちょっとした時間の間に、絵は表情を変えていました。
至福の時間でした。

投稿: 好日 | 2006年11月 6日 (月) 00時01分

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