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2006年11月 2日 (木)

プライスさんの「若冲と江戸絵画展」その1

プライスさんの収集した「若冲と江戸絵画展」。前評判にたがわず素晴らしいものだった。収集家としての定まった美意識(好み)に基づくコレクションは見ていて気持ちの良いものだった。

Jyakutyuu1個人のコレクションとなるとある特定の作家の作品を収集したものと、コレクターの好みの作品を集めたものとに大別されるが、後者の場合は作品にむらが有り(見る側の主観ですが)作品の内容が一定しないように思えるものが多い。しかし、プライスコレクションは自然な美しさと、見て楽しい作品を集めるという方針が貫かれているように思えた。
今回里帰りした作品は約109点、その中核を成すのは「伊藤若冲」「長沢蘆雪」等の江戸時代の京都画壇の作品群と、「酒井抱一」「鈴木抱一」等の江戸琳派の作品群である。

展覧会は、「正統派絵画」「京の画家」「エキセントリック」「江戸の画家」「江戸琳派」の五部構成。特に江戸琳派の酒井抱一の「十二か月花鳥図」は特別に陽の光の中で見られる様、会場を変えて特別の工夫がされている。

その中から、好みの作品をピックアップして見た。
Photo_41長沢芦雪「牡丹孔雀図屏風」(画像は部分)

牡丹孔雀図は円山派の画家達が多く描いた絵で、芦雪の師匠である円山応挙がその元となる絵を描き、その弟子達がそれを写した。芦雪にしても何枚かの「牡丹孔雀図」があるが、その中でもこの作品は構図といい、色のあでやかさといい、特筆物である。

応挙の孔雀は雌雄2匹、右下に雌が描いてあるが、この絵は1匹。その空間が、屏風として開いた場合のこの絵に奥深さを感じさせている。

羽の膨らみ、ぬれた様な黒羽根はこの孔雀の精悍さを増し、見るものを刺す様な孔雀の眼は、師応挙に挑戦するかの様な芦雪の気概を表しているように思える。
Tora長沢芦雪「猛虎図」(画像は部分)

今回のコレクションには多くの虎がいた。若冲、兄弟弟子の源キ、同じ円山派の亀岡規礼、片山楊谷等合計7枚の虎の絵があったが、この虎が最も面白かった。

毛並み、目つき、しなやかさ、全てが虎の獰猛さ、野生さ、そして神秘性を表している。それは見る者に対峙する姿勢を求め、円山派が基本とした写生の域を越えた絵となっている。(その後、3回この絵をみたらだんだんその顔がかわいく見えて来た。)

芦雪には、和歌山の無量寺にもう一つ有名な虎図がある(現在奈良県立美術館「応挙と芦雪」展で展示中)。その虎は、この絵とごろっと雰囲気が変わり、虎の顔は猫顔になっている。(阪神タイガースのマスコットの顔とよく似ている!)この辺りが芦雪という画家の面白いところでもある。
Photo_42
長沢蘆雪「白象黒牛図屏風」
芦雪の絵が続くが、この絵を見た時その大きさに圧倒された。今まで色々と見て来たが、これだけ大きさを感じさせる作品は少ない。絵自体の大きさも有るが、それ以上に屏風一杯に描かれた(はみ出している!)黒牛白象の存在感に圧倒された。
それを更に強調しているのが、左下と右下に描かれている、白い子犬と黒い鴉である。この構成の見事さは芦雪が見せる奔放さをよく表している。
日本画家の知り合いの話では、この黒牛のように実物よりも大きく描くのは非常に難しいそうだ。構図を見るため離れて眺めた時と、描く為に側に寄った時とでは、ディテールに対する感覚が異なって来る。そのためなかなかこのように勢いを持ちながら描く事はできないそうだ。
細部を見ると、黒牛の目が面白い。右目は縦に光彩が描かれているが、左目は横に描かれている。このアンバランスがこの牛の表情を親しみやすいものとしている。象の目もまたかわいい。
芦雪の絵はこれ以外に、「軍鶏図」「幽霊図」「神仙亀図」が展示されていたが、どの絵もすばらしいものであった。芦雪の絵は見る者に絵以外の物語を導く。例えばこの絵なら「黒牛さんと白象さんが出会いました。黒牛さんは白象さんに友達の子犬を紹介しました。白象さんは・・・・」てな調子が頭の中に浮かんで来る。実際、展覧会に来ていた小さい子供が「牛さんと象さん、何話してんの?」と母親に尋ねていた。

Photo_43森 狙仙 左図「猿猴狙蜂図」 右図「梅花猿猴図」

森狙仙は、江戸後期の円山派の画家で、後に自ら森派をつくった。「狙仙の猿」として猿を描かせれば一級と評判を取り、自らもそれを意識し、ある時までは「祖先」と号していたが、獣にちなみ「狙仙(けものへん)」に号を替えたいわれがある。

左図は、春であろう周りの暖かさが感じられる絵である。一匹の猿、その上を飛ぶ蜂。猿は蜂を狙っているのだろうか?、それとも蜂を避けようとしているのだろうか?その猿と蜂の空間がすばらしい。これよりも高くても、猿は蜂を気にかけようとはしないだろうし、これより低くいと猿の体に緊張感が走る。この間合いが春の日だまりを感じさせこの絵をすばらしいものとしている。

右図は、フサフサした柔らかそうな毛と写実に徹した親子猿の描き方とデフォルメされた梅の木のコントラストがすばらしい。一つの軸の中に極端な二つの描き方を違和感無く収めている。日本画の特色である二つの世界の対比、それは遠と近、高と低、光と陰であったりするがそれを画法にも持ち込んでいる点がおもしろい。

書き出すときりがないので、
「若冲」および「江戸琳派」の作品に付いては、その2、その3で。

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コメント

わたしは見に行って後悔しました。展示替えもあったのに、なぜ何回も足を運ばなかったのだろうって・・・。
十二ヶ月~も、いろいろな光のもとで見てみたかったです。

芦雪は幽霊が恐かったです。あれを灯明の光で見るとさぞかし・・・と思いました。幽霊の絵二枚の横に美人画があるのもなんとなく恐かったのですよ。この美人もこうなるかも・・・と言っているようで(笑)。

TBとリンクさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

投稿: はたこ | 2006年11月 2日 (木) 22時00分

はたこさんへ
十二ヶ月〜は午前中と夕方に見ましたが、夕方の方が良かったと思います。ちょっと陽の光が弱くなり、絵に陰がうっすらとかかる頃、たらしこみで描かれた色の濃淡がきれいに現れていました。
見られる、見られないは時の運、見られるときに好きな絵をしっかり見ればいいではないですか・・・。

投稿: 好日 | 2006年11月 3日 (金) 21時48分

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