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2007年5月21日 (月)

「安宅英一の眼」大阪市立東洋陶磁美術館(その1)

今から約30年程前、安宅産業が崩壊し、その時「安宅コレクション」の全容を示す美術展が「京都国立博物館」で開催された。当時学生だった私は、人に連れられてその展覧会に行き、朝鮮、高麗そして中国の陶磁器の美しさに圧倒され息を飲んだ覚えが有る。
Img_ataka1それ以降、多くの名品を追いかけ見て来た。韓国にも行ったし、中国、台湾へも行って来た。しかしその美しさの基準は30年前に見た、安宅の壺であり、皿であった。私にとっては東洋陶磁の原点となるコレクションである。
その後、この美術館が開館し常設展等で再びめぐりあうこともあったが、本格的に「安宅コレクション」に的を絞った特別展はこれが初めてではないかと思う。

今回の美術展には「安宅英一の眼」という題がついている。美術展を見て思うことは、安宅英一は子供のような眼を持ってこれらの陶磁器を収集したのだなと思える。こどもが玩具を欲しがるのと同じ様な感覚である。
欲しいものは欲しい。美しいものは美しい。その感覚である。確かにその美的感覚、美しいものを見極める感覚は、鋭いものがあるが、判断の基準の原点は、子供の様な純粋な欲望であったと感じる。
昨年、MIHO美術館で同じ様な「青山二郎の眼」と題した展覧会があった、当代の目利きであった「青山二郎」の愛した作品が並んでいた。それらを見た時、青山二郎は世間に対して自分の美の世界を認めさせようとする気持ちが強いなと感じた。それが経済的にも、評判としても自分に帰る事を期待している世界だなと思った。ある意味で「骨董屋」さんの眼である。
それに対して、安宅英一の眼にはそのような雰囲気はない。経済的にも、名声も「美」に期待するものは無い。欲しいから集めた。自分が美しいと思うから買った。面白いから手元に置いた。という眼である。

学生の頃、このコレクションを見て、安宅英一に対して「嫉妬」のような感情を抱いた事を思い出す。自分の欲望に忠実に生きられる人間に対する「嫉妬」である。それは「美」を独占できる者に対する怒りのような感情であったかもしれない。
今回、美術展を見終わって思う事は、コレクションが散逸しなくてよかったな。いい物が見られて良かった。という事である。約30年の年月は人をこのように変えてしまう。少し歳をとったなぁ・・・・

前置きが長くなったが、気に入ってる名品を紹介すると

Img_2207李朝 「青花草花文壺」。
中央に草花(秋の草花かな)が伸びやかに描かれた壺。高さは25㎝位。
安宅コレクションにはいくつかの秋草手があるが、この壺が最も白磁が美しい。
コバルトで描かれている秋草は他の壺から比べると少し薄色であるが、かえってその方が青色の発色が鮮やかでこの壺を引き立てている。
真ん中よりも少し上目で張った胴もバランス良く、底にむかってすぼまって行く形がこの壺を引締めている。
李朝の職人が無心に描いた葉の流れがあくまでも自然で、清楚な花の様子が心をとらえる。

Img_2214高麗 「青磁印花龍分方形香炉」
高麗青磁の名品。この瑪瑙色がたまらない。釉薬と自然が作る深い世界。
周りの彫られている中国の青銅器を模した文様もなにかいわくがありそうでこの青磁の魅力を高めている。
香炉の内側は、釉薬の斑が少なくこの時代の技術の高さを知らしめている。

Img_2224北宋 「青磁 水仙盆」
北宋汝窯の青磁。この青磁は世界に100点ほどしか存在していない。北宋の官窯で作られた物で、皇帝や上流の貴族のみが使用を許された物。
3月に台湾の故宮で世界中から集められた汝窯の作品を見て来たが、これはその中でも上物にあたるもの。これが日本で見られる事は幸せなことだ。
他の汝窯と比べると少し瑪瑙色が濃い様に思える。見る角度によっては少しピンクがかかった様にも見える。この色を中国では「雨過天青雲破処」とたとえ、雨が止み空の一部の雲が割れて青空が見え出す時の色とされている。
この色は写真なんかでは決して表現できない色。見た者しか感じる事の出来ない色。
この青磁には惹き込まれてしまうような魅力がある。

Img_2227北宗 「青磁刻花牡丹唐草文瓶」
北宗耀州窯の青磁。同じ時代の青磁でも、この窯の青磁は濃いオリーブグリーン色している。
通常の彫りよりも深く彫られ、その窪みに釉薬がたまり、写真で見る以上に立体感を感じる。
ボタンの花の重厚さが見事に表現された名品。
耀州窯としては、世界最高の物ではないかと思う。沈み込んだ緑の色に陶磁器の魔力を感じる。

(続く)

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