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2007年9月27日 (木)

「美麗 院政期の絵画」奈良国立博物館(その3)

第3章は「絵巻物の世界」。詞と絵により、情景と人々の気持ちを優雅にかつビビッドに表した絵巻物。この時代の状況を我々にくっきりと伝えてくれる。

今回の絵巻物の展示の中で目玉は「伴大納言絵巻」(国宝)。この絵巻、関西にはなかなかやって来ない。2年程前、京博で開催された「大絵巻展」にも来なかった。昨年、所蔵している出光美術館で全巻展示が行なわれ、東京へ行こうかと思ったが、人が溢れ返っていると言う噂を聞き断念した。今回、3巻の内の1巻、「上巻」が来ている。

Img_narahaku31前期はその上巻の応天門の火事を見に行く群衆の場面が開かれていた。(上巻7〜9紙の部分)。
応天門の火事の様子を見ようと市中から駆け寄る群衆の「火事だ!、火事だ!」と叫ぶ声が聞こえて来る様な気がする。野次馬根性まるだしで驚愕しながらも高みの見物をする市中の者供の姿が、かえってこの後に続く物語の奇妙な展開を暗示している。しかしどの表情も豊かだなぁ。一人一人が個性的に描かれている。

Img_narahaku32

これは燃え上がる応天門。黒々とした煙を上げ、炎がめらめらと門を覆って行く。この応天門を復元したのが今の平安神宮の入口にある門。しかし今の平安神宮の門は、昔の燃え落ちた応天門約8分の5のサイズ。当時の応天門炎上時の炎の大きさが計り知れる。しかしこの炎、きれいに色が残っている。「紅蓮の炎」を見事に描き切っている。仏画の仁王さんの光背に描かれる炎はだいたいが渦巻き模様だが、この「伴大納言絵巻」の炎は写実的で舐めまわす様に広がり、その熱気が伝わって来るようである。

この「伴大納言絵巻」、一説には後白河法皇の命により絵師常磐源二光長が描いたとされている。ただ筋書はこのあと、伴大納言(伴善男)の直訴により、応天門放火の犯人は左大臣源信(みなもとのまこと)とされるが(上巻)、それは政敵を陥れるために伴善男が謀った策謀だったということが子供の喧嘩から判明し(中巻)、伴善男は伊豆へ流された(下巻)となる。それでは後白河法皇は何のためにこの絵巻を作成したのだろうか?。単なる昔(応天門事件は後白河法皇の時代から300年前)の出来事の記録のためだったのだろうか?それではこの絵巻がつまらなすぎる。なにかもっと深い思いがあるように思える。そのへんはまたゆっくり考えてみよう。

まあ、なにはともあれ上巻だけでも見られたのは嬉しかった。

Img_narahaku33

これは「信貴山縁起絵巻」(国宝)。この絵巻は奈良の朝護孫子寺所蔵のため関西では見る機会も多い。前期は「山崎の長者」の巻。この絵巻何時見ても面白い。筋書きが奇妙奇天烈、摩訶不思議。「スパー念力男、信貴山の僧明蓮が鉢を飛ばしてお布施のお米を求めたところ、けちな山崎の長者はお布施をせずに鉢を米蔵にほり込んだ。そうすると鉢は米蔵ごと持ち去って行った。」というお話。

この時代の絵巻には2種類あって、濃い目の色で宮中の物語等を描いた女性好みの「女絵」と線描を基本とし専門の絵師が描いた「男絵」とがある。「伴大納言絵巻」も「信貴山縁起絵巻」も男絵にあたる。これらの絵巻には庶民から、僧、武士、役人、貴族に至る多くの登場人物が描かれ、多種多様な生き生きとした表情を見せている。その中でも、貴族達は「引目鉤鼻」のデフォルメされた表情だが、庶民達は個性豊かな表情で描かれている。絵巻物は基本的に貴族達が見ることを前提として描かれている為、人物が特定されることを避けるため「引目鉤鼻」の表情になり、問題のない庶民達は写実的な表情になったといわれている。庶民の生活や楽しみが、貴族の生活にも入りこみ、その生活が互いに近づいていった後白河法皇の時代の状況をよく反映した絵巻である。

その他、「華厳宗祖師絵伝」(国宝)、「粉河寺縁起絵巻」(国宝)、「寝覚物語絵巻」(国宝)等も展示されていた。それに六道絵も国宝どころはすべて集まっていた。
これについては次に。

*「美麗 院政期の絵画」
 奈良国立博物館
 2007.09.01〜9.30  (前期・後期により展示替え有り)

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