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2007年11月 2日 (金)

「彦根BIOMBO」彦根城博物館

久し振りの彦根。京都からだいぶん北にあるだけに、京都を出る時は暑いくらいの風が彦根では肌に心地良い風となっている。駅前から城へ向かう道を思い出を拾う様にゆっくりと歩いて行く。外堀の周りの松の緑がすがすがしい。やがて道は城の櫓を避ける様に鋭角に回り込み大手門に着く。大手門を入った所に彦根城博物館はある。ここで9月28日から10月26日まで「彦根屏風」が展示されていた。

Img_hiko1

「彦根屏風」は井伊家に伝わる初期風俗屏風の傑作。屏風の内容からして井伊家が注文主ではなく、いつの時代かに井伊家が入手し伝来してきた。
製作は17世紀の前半、江戸時代の初めと考えられており、当時の京都の遊里「六条の三筋町」の様子を描いたもの。作者は狩野派の画家だとされているがいまだ謎のまま。

この屏風右側の1面から2面にかけては屋外の様子を描き、真中の4面から左端の6面にかけては室内の様子を描いている。ただ背景が金箔一色であるため、室内、室外の境はわからない。このような金色一色の背景の空間の取扱いはこの時代の屏風によく見られる傾向である。そこに表されているのは異質の世界、すなわち「異界」である。「金」の持つ神秘性とか魔性とかが象徴する日常とはかけはなれた世界である。
この頃の遊里は一種の文化サロン的な意味合いをもっており、最新の風俗の発信地でもあった。ある意味で現実からの逃避を実現する夢の世界。「異界」である。

Img_hiko2右側に描かれている「歌舞いている若者」。

刀に枝垂れかかり、大きく傾きながら遊女をからかっている。
しかし、その目付きはどこかうつろでこの世を離れた表情をしている。

不自然に伸ばされた右手の肉体の持つ独特の柔らかさ、扇子を摘んでいる指の力の無さ。
なにかアンバランスな様子の中に、この時代の「歌舞伎者」が持つ浮揚感とかアンニュイな雰囲気が感じられる。

着崩した着物の優雅な事。江戸の粋とはまた様子が異なるが京都独特の落ち着いた華やかさと袖口にはいった小紋の粋さ。

Img_hiko3これは左側部分の遊女と双六をしている部分。
この部分は「琴棋書画(中国の文人のたしなみ)」を見立てているもの。
琴は三味線、棋は双六、書は遊女が読む恋文、画は背景の山水画。

この屏風の特徴である「細部」へのこだわりが素晴らしい。
左の双六をする女の着物の小紋が、一つ一つ丁寧に描かれている。また真中の髷を結っている女の髪の一本一本までが細かく描かれている。

Img_hiko4ちょっと部分を拡大すると、眉毛までが細かく描かれているのに驚く。
どの様な細い筆で描いたんだろう。毛一本の筆ではなかろうか?(拡大してどうぞ)

でも一人一人の表情が豊かですね。

この「彦根屏風」以前見た時は、一面一面がばらばらにされており、屏風の形にはなっていなかった、また傷みもすすんでおり、金箔も酸化が激しかった。
今回、修理と補修により屏風の形にもどされ、きれいに洗われて以前に増して魅力的な屏風となった。

その他、遊女が連れているペットの洋犬のや、女が結っている髷の形や、背景の山水画の内容等見るべき点、驚かされる部分は多くあるが、今回の修復に寄って回復された金箔の輝きが発する「異界」の雰囲気が新たな楽しみを与えてくれる。

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