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2007年11月20日 (火)

「KYOTOきぬがさ絵描き村」堂本印象美術館

大正末から昭和にかけて京都の衣笠の辺りには多くの日本画家が居住しており、日々生活の中で衣笠の自然と親しみ製作を行っていた。その衣笠にある堂本印象美術館で、「KYOTOきぬがさ絵描き村」と題された展覧会が開かれている。

Img_doumoto1今回出展されているのは、徳岡神泉、堂本印象、小野竹喬、福田平八郎、山口華楊の5人。
昭和の京都画壇を代表する画家達である。

徳岡神泉は独特の色合いで抽象性に富んだ日本画を描き続け、等持院の近くに住んでいた。
堂本印象は日本画から始まり抽象画へと突き進み、金閣寺のあたりに住んでいた。
小野竹喬は清らかな感じのする風景画を描き続け、等持院の門前近くに住んでいた。
福田平八郎は単純化されたフォルムの中に抽象性を追求した絵画を描きながら、同じ様に等持院に住んでいた。
山口華楊は独特の線で虎や獅子、そして黒豹等の動物を描き続け、紙屋川の近くに住んでいた。

同じ「きぬがさ」という土地に住みながら、同じ空気をすいながら各人個性豊かな画を描いている。

小品の展示が多いが、生活していた土地で見るとなると、かえってその方がほのぼのした感じがして気軽に見る事が出来る。ちょうど彼らが製作の疲れを癒す為にこのあたりを散歩していた様に。

この「衣笠」という地域には、独特の雰囲気がある。彼らが住んでいた昭和の初めの頃は知らないが、昭和の40年代にこの地域にある学校に通っていたため、その頃の「衣笠」の雰囲気は知っている。学校の屋上から見ると西の方には等持院の松林が広がり、北の方には衣笠山から大文字の山々が広がり、東の方には平野神社から北野天満宮の木々が広がっていた。緑にあふれた土地柄で、緑の合間に和風の大きな邸宅が並んでおり、所々にまだ畑が点在していた。そして、夕刻にはお寺の鐘が響くような感じであった。昭和の40年代でさえそんな感じであったから、昭和の始めはもっとのどかな雰囲気だっただろう。

そんな中で、まだ若かりしこの5人の画家達が新しい日本画の表現を求め、製作に苦心していた事を思うと感慨深い物がある。

この5人の中で、やはり気になるのは「神泉」と「平八郎」。
「福田平八郎」に関しては以前のblogに書いたので省略するが、「徳岡神泉」について少し。

Img_doumoto3「徳岡神泉」は名前が示す様に、京都の二条城の南側にある「神泉苑」の近くで生まれた。私にとっては地元の画家。「神泉」が子供の頃に見ていた風景や遊んでいた場所が、時代は異なるが私の中でも同居している様な感じがする。そういう親密感を感じる。

今でこそきれいに整備されている「神泉苑」だが、昔はもっと寂れた、荒れた庭園で子供の心に神秘的な場所だった。土塀や石垣も崩れた様になっている部分があり、池も落ち葉等が多く浮いており橋も腐りかけたような状態であった。
「神泉」の描くあの深い緑の色や、さびた様な赤色を見ると、神泉苑の淀んだ様な池の水の緑や、橋の欄干に残る風化した朱色を思い出す。
そのような中から、「神泉」独特のあのモチーフに対する象徴性とそのなかに閉じ込められた時の移ろいのような表現が生まれて来たのではないかと思う事がある。

今回は、そんな「神泉」の画が15枚ほど並んでいる。なかなか見られない作品数である。

こじんまりとした美術館で、訪問する人も少ないため、気楽にかつ身近に京都画壇のすばらしさを感じ取ることができた展覧会であった。

*「KYOTOきぬがさ絵描き村」 京都府立堂本印象美術館
 京都市北区平野上柳町26−3  ☎075−463−0007
 市バス 「立命館大学前」
 2007年10月19日〜12月9日

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コメント

こんにちは!
堂本印象美術館には今年の初夏に行ったことがあります。
今、こんな素敵なラインナップで展示がされているのですね!
うらやましいです!
どらえもんのどこでもドアがあればなあ、と思う今日この頃です。

投稿: はな | 2007年11月22日 (木) 11時22分

はなさん、こんばんは。
京都らしい展覧会でした。京都の持つ落ち着きと京都らしい雅かさが同居した小品が気持ち良く並んでいました。

はなさんも行かれた京都市美術館の「京都と近代日本画」と合わせると、あのキャッチフレーズではないですが、「「京都画壇カク鬨ヲ挙ゲリ」な感じがします。
(「鬨」と言っても、京都弁の「よいやさ〜〜」見たいな感じですが!)

投稿: 好日 | 2007年11月22日 (木) 21時32分

こんばんは
こちらからもTBとばなかったらごめんなさい。

>緑にあふれた土地柄
うちの親もそう言ってました。なんとも言えずのんびりしていたと。
先日乾隆小学校あたりから歩く中でも、紅葉した山が丸々していて、みるからにのどかでいい感じでした。たとえ車がビュンビュン走ってようとも。
きぬがさ村ひとつのことでなくとも、たとえば中京、東山、衣笠、とそれぞれ全く違う雰囲気の中で画家たちが育ち、見事な作品を残したことを想うだけで、ときめきますね。
いい展覧会でした。

投稿: 遊行七恵 | 2007年12月 8日 (土) 23時27分

遊行さんへ
TBありがとうございます。
おっしゃる通り、京都の雰囲気のなかで多くの画家達が育ち、多くの素晴らしい画を描いて来ました。また現在も多くの画家達が育っています。
京都も日々変わって行きますが、同じ京都に居る楽しみをもち、今後も京都画壇の変遷を追いかけて行きたいと思います。

投稿: 好日 | 2007年12月 9日 (日) 21時28分

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