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2008年2月24日 (日)

「玉村方久斗展」 京都国立近代美術館

2月17日まで京都国立近代美術館で開催されていた「玉村方久斗展」へ行って来た。

「玉村方久斗」初めて名を聞く作家。
略歴を見ると、明治26年京都の錦新京極(錦天満宮の有る辺り)に生まれ、京都の絵専(今の京都芸大)を卒業し、その後東京に住み、前衛的な日本画を描いたとされている。
もっと端的にいえば、エッセイスト玉村豊男のおとうさん。

初めて見る玉村の画は、大正の初めから昭和の10年代にこれだけの斬新さを持ち合わせた画家がいたのかと驚かされる画であった。

Img_tamamura7まずは初期の代表作とされている「雨月物語」の巻物。
「雨月物語」九話が一巻ずつ巻物に描かれている。

元々がおどろおどろしい話の物語を更に今で言う劇画調のタッチで大胆にかつ克明に描いている。

「雨月物語」を知らなければ、単なるグロテスクな画としか捉えられないが、その物語を知っていれば描かれている人物の顔や、飛び散る血潮の情景に物語の本質が浮かび上がって来る。

これは「青頭巾」の話。愛した稚児の死をいたむがあまり、稚児の死体を食らい鬼と化した阿闍梨の姿。この画を見て思い出したのが、平安時代後期の「地獄草紙」。同じような地獄の様子を描いている。

しかし、「地獄草紙」と異なるのは、玉村の描くこの阿闍梨は、仏教で言う「愛別離苦」の末、鬼にまでなったにもかかわらず、その顔は、らんらんとした血走った眼をしながらもなぜかある種の法悦の様な喜びの表情をうかべている。

人間の業のようなものを思い知らされる画である。

Img_tamamura6_2これは「浅茅が宿」の巻。

都の出稼ぎにいった夫を思いながら死んだ妻の亡霊とその後戻った夫とが、一夜を過ごす情景である。

えんじ色に染め上がった草むらの中で、仲睦まじく二人寄り添う姿は胸を打つものが有る、
亡霊の妻の顔が喜びに満ちている様子はせつないなあ。

玉村はこの雨月物語を二度描いている。一度は関東大震災前に、もう一度は震災で先の画が焼けてしまったために。
それほどこの画に執着していた。

しかし、二度も描いたのは単に焼けたからではなく、この巻物に描かれているグロテスクな情景が震災での情景にオーバーラップしたからではなかろうか。
ひょっとしたら、画が焼けなくてももう一度描いたのではないだろうかと思わせる現実感がこの画にはある。

Img_tamamura3これは昭和3年に描かれた「黍図」

二曲一雙の屏風である。

墨の濃淡で描いた画だが、まんなかに大きく力強く伸びた黍が描かれた大胆な構図の画である。

日本画の基本にのっとった画だが、その構図に斬新さが有り、玉村のうまさが計り知れる。

「雨月物語」の様に早書きで、かきなぐったようなタッチで描いていても、画家としての確かな腕が備わっていた事がわかる。いまでいう「ヘタウマ」の元祖のようなところがある。

その他、出展されている、動植物画や風景画を見ていると、玉村は大和絵から琳派、そして南画、四条派の要素を会得した器用な画家であったともいえる。

Img_tamamura4昭和の6年位からは玉村は突然、自分と同時代の情景を描き出す。

これはその内の「港町寸景」。

明るい色と、見慣れた情景を「暢気なとうさん」風に描き出す。今まで古典や歴史を題材にした画が多かったことから見ると、大きな転換である。

これらの画を見て気付く事に、視点がちょっと斜め上から見下ろした様な視点になっていること。
この様な視点は大和絵でよく見られる。題材は変わっても視点までは変えられなかったのだなと思うと面白い。

この題材の変化には、結婚をし家庭をもったことが要因であると言われている。そんな話を聞くと、玉村も人の子だったのだなと変な安心をする。

Img_tamamura5これは昭和18年にえがかれた「ハーモニカを持つ少年」。

自分の息子を描いた画だろうか?。玉村の画にしては、奇麗で清楚な感じがする肖像画である。

少年を表すにふさわしい薄い青色のバックに、唇の赤が初々しい。その赤も、今までよく使用した濁った赤ではなく、澄み切った赤である。

展覧会の最後の方でこの画を見付けた時には、何かほっとした気持ちになった事も事実である。

京都に関係する画家のなかに、秦テルオや岡本神草、甲斐荘楠音など、それまでの京都画壇とは一風変わった画を描いた画家達がいる。しかし、その後の状況を見ていると、個性的だと思われたそれらの画家達の画も、その後の多くの画家達に引継がれていっていることがわかる。
玉村方久斗の画もそういう意味では10年早かった画であったが、その個性は現在に続いているものである。

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