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2008年2月11日 (月)

「V&A浮世絵名品展(その2)」 神戸市立美術館

今回の「V&Aコレクション」の特徴に団扇絵がある。

団扇は奈良時代に鑑真といっしょに仏具の一つとして日本に渡来したものだが、その後日本独自の扇子と共に生活の道具として広まっていった。はじめは手書きの絵が描かれていたが、江戸時代に入り大量生産の必要から、印刷された絵、浮世絵が使われる様になった。

Img_va5これは歌川広重が描いた「江戸名所見立三光 両国月之景」。

「広重の藍色」独特の色使いが美しい団扇絵である。

それと広重独特の構図。
遠景を広く横にとり、それを斜めに横切る両国橋。この構成で遠景の広がりを保ち、それをパーンと2つに割る座敷の縦の柱。これで画の構成がピリリと引き締まり、左に満月、右に女で画に広がりを持たす。

水平、斜め、縦と3つの構造物を取り入れる事により、絶妙の構成で画に見所を付ける。

広重の風景画、本当に見惚れる。

Img_va6これは鈴木其一が描いた団扇絵。

団扇に「団扇売り」の画を描くなんてしゃれてるなぁ!
このように前後に振り分けて売りに歩いていたのだなぁ。団扇の色の奇麗な組み合わせ。

鈴木基一は酒井抱一の弟子で、江戸琳派の画家である。今回、師抱一の団扇絵もあったがそれは20匹の蚊が描かれている。蚊を追いやる団扇に蚊の画を描くのもしゃれているなぁ。

浮世絵師の描く団扇絵とは、又ちょっと異なった「しゃれっ気」が感じられる。

こんな団扇もらったら、もったいなくて使えない。団扇にあおられる風は、さぞ心地よいものだっただろう。

多くの団扇絵が出品されていたが、不思議な事にこれらの団扇、京都の団扇とは形が異なっている。
京都の団扇はだいたい丸形。このような四角形の団扇は知らない。所変われば、団扇も形が変わるのかなぁ

Img_va9これは葛飾北斎の「肉筆帖 蟹」。

この肉筆浮世絵、すごい。浮世絵の範疇を越えてますね!
いままで多くの肉筆浮世絵を見て来たが、大方は筆と絵具で浮世絵を描いたもの。
しかし、この北斎の肉筆は違うね。

極端な言い方をすると、今までの日本の絵画の要素が凝縮されている感じがする。
雪舟の掠れ、永徳の描線、光琳の色調、宗達のたらし込み、等伯の勢い等全てがギューッとつまっている感じがする。

北斎はある意味、非常な努力家であって、この時期古今東西の画をよく見て勉強したのだと思える。

Img_va8最後は歌川貞秀の「新板早替両面化物」。

貞秀という浮世絵師は知りませんが、なかなか面白いおもちゃ絵。
小さい頃、雑誌の付録にこんなんありましたねぇ。
きれいに切り取って、間に割り箸でも挟んで、クルクルと廻すとパッパと絵が変わる面白さ。
愉快、愉快!

このように今までとはちょっと違った感じの絵が多く有った展覧会だった。
有名な浮世絵を期待して行く人にとってはもの足らない感じもあり、妙に「通な人」が喜びそうな選別だが、浮世絵の多面性を知る事が出来た。

海外からの里帰り浮世絵の展覧会がある度に、「江戸から明治の日本人は浮世絵の芸術性を理解できなかった。」という意見を聞くが、いろいろな浮世絵を多く見ていくにつれ「そうではないな!」と思う様になった。
江戸の人々にとって、浮世絵は生活の一部であって、あえて構えて見る様なものではなかったのだ。当時、浮世絵は大首絵で1枚16文位で売られていた。それは蕎麦一杯の値段が16文だった事から思うとそんなに高いものではなかったのだろう。(江戸時代、蕎麦は高級な食べ物だったのかも知れないが?)
今で言えば、コミックや雑誌のような、どこにでもある娯楽であったのだ。当たり前の「美」であったのだ。

逆に、この時代の江戸の庶民達が、浮世絵に含まれる「見立て」やその絵に隠されている「比喩」を理解し、当たり前の美として浮世絵を楽しんだとと言う文化的な素養の高さを誇るべきだと考えるのは、ちょっと負け惜しみかな?

グローバル化が進んだといわれる現在、江戸時代の様な文化的な素養は残っているのだろうか?
何処へ行ったのだろう?

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コメント

新板早替両面化物、大好きです(笑)。今でもペープサートという、こんな紙人形を使う人形劇がありまして、図書館や保育の現場ではよく作られおり、わたしも作ったことがあります。

「江戸の人々にとって、浮世絵は生活の一部であって、あえて構えて見る様なものではなかったのだ」

 わたしも同じ意見です。歴史の記録でもそうだと思うのですが、当たり前のことほど記録は残っていないものですよね。誰でも知っているからわざわざ書いて残しておく必要はない・・・、みたいな。
 
 また、浮世絵には、江戸時代のサブカルチャーという側面があるのだと思っています。

投稿: はたこ | 2008年2月14日 (木) 00時35分

はたこさんへ
一つの見方として、「芸術」というものは歴史の記録にならないその時代の雰囲気とか人々の思いを表すものだと思っています。
美術にしろ、音楽にしろ、演劇にしろ、その時代を明確に表しているものがやはり素晴らしいものとして残っています。
そんな感じで、色々なものを見たり、聴いたりしています。

現在からは一体何が残るのでしょうかね?

この春は、名古屋の「ボストン」「北斎」そして奈良県立の「ミネアポリス」と浮世絵の展覧会が続きますね。
楽しみです。

投稿: 好日 | 2008年2月15日 (金) 00時34分

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