「V&A浮世絵名品展(その1)」 神戸市立美術館
最近、海外の有名美術館から里帰りした浮世絵の展覧会が多い。
今回はイギリスのヴィクトリア アンド アルバート美術館から。
海外からの里帰り作品の特徴は、一つには状態が非常に良いという点。これは、一時的なジャポニズムの流行によりコレクションされたが、その後はあまり展示される事も無く保存され続けていたためだろう。
もう一つは大量に所蔵しているためそこから選ばれたものには初見のものが多いということ。幕末から明治初期にかけては、日本では浮世絵は反古紙同様の扱いを受けており、開国にて訪れた外国人達は安い値段で(それでも日本での価値の何十倍)大量の浮世絵を手に入れる事ができた。その中から選ばれて里帰りした優品には、日本でもう手に入らないものも多い。
そんな中から気に入ったものを。
まず、ポスターにもなっている、歌麿の大首絵「八百屋お七」。
恋人に会いたいが為、家に火をかけたとの話が伝わるあのお七。ちょっと上がり気味の眉が、一途な気持ちを示している様。
この絵、その火事を示すがように赤く焼けた雲がバックにそれとなく描かれている。
しかし、十六歳といわれるお七、ちょっと年増なかんじがするなぁ。
それまでの浮世絵の美人画というのは、「美人」に描くという画であったが、英泉の美人画はちょっと違う。
ちょと世の中を斜めに構え、崩れた様な雰囲気がある。そして切れ長の眼と流し目が官能的。
これは魅力的だなぁ。
ある意味、現実の女性を描いている。
それに英泉の描く女性の着物が渋い。小紋や絣の柄が落ち着いた色合いで描かれている。
「大年増」と言う感じがよく出ている。
幕末近いこの時代の雰囲気を英泉は鋭くとらえ、その画に時代の雰囲気を色濃く出している。
英泉自身も不遇の時代が長く、そうとうひねくれた性格だったらしく「すね者英泉」と呼ばれていたらしい。
浮世絵というのは、その性格からして、画の巧拙だけではなく、絵師と時代とがうまくマッチした時に面白い画となるということが感じられる一枚。
これは魚屋北渓(ととや ほっけい)の「鬼若丸の鯉退治」。
金銀摺の水面に大きな鯉が大胆に描かれている。今回の展覧会でも白眉の一摺。
魚屋北渓という浮世絵師は今回が初見。カタログによると北渓は北斎の門人であった。魚屋を営んでいたため、「魚屋」と呼ばれたらしい。
これ以外に何点かの北渓の浮世絵が有ったが
北斎の大胆な構図とおどろおどろしい雰囲気を見事に引継いだ画だった。
しかし、その中にも彼独特の今の言葉で言うと劇画的なスピード感があふれている。
見事な浮世絵師がいたもんである。
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