「ボストン美術館 浮世絵名品展」 名古屋ボストン美術館(その2)
今回の展覧会で見たかった作品のひとつが歌川国政の役者絵。
歌川国政は初代歌川豊国の弟子で17世紀の後半から18世紀にかけて役者大首絵に傑作を残した浮世絵師。師匠の豊国をして「おれよりうまい、役者絵を描く」と言わしめた。
元は紺屋の職人であったが、芝居好きが昂じて豊国に弟子入りし、役者絵を描き出した。
芝居好きだけあり、めりはりのある構図で、歌舞伎の本質である粋の良い場面を切り取っている。
これは「市川鰕蔵の暫」。(昔は海老蔵ではなく鰕蔵と書いたらしい。)
いいなぁ、この構図!
「暫〜く、暫〜〜く !」とちょっと甲高い声が響き、花道へ鰕蔵の鎌倉権五郎が飛び出してきた瞬間。
観客の目は一斉に鰕蔵の顔へ注がれる。
紅で描かれた「筋隈」。猛々しい「車鬢」。釣り上がった直線の眉、噛み締められた口、画面を大きく割り切る深紅の「素襖」。そこに白く抜かれた市川家の三枡の紋。
なんか、今の海老蔵と重なる部分がありますね。
色といい、構図といい、今の時代から見てもモダンです。
クローズアップとデフォルメの傑作です。
江戸の終わりにこのような浮世絵があったことは、外国人でなくても驚きます。
芝居好きだけあって、すいよせられた観客の目の動きがとまった瞬間を描いてる。
豊国の役者絵程派手な感じはしないが、すっきりとした風ながら、芝居の濃厚さを感じさせる。
役者絵は浮世絵の中でも、美人画と双璧を成す分野で、浮世絵の祖と言われている菱川師宣の頃から始まった。当初は全身を表した舞台姿が主であったが、芝居の発展と共にその当たり芝居の所作を際立せる工夫がなさるようになった。そして写楽にいたって大首絵の似顔絵の形状をとるようになった。
以降、芝居の熟覧期と合わせる様に豊国、国貞、国芳と続く訳だが、そのなかで国政の役者絵は師の豊国らとは少し異なり、そんなに誇張も無く役者本来の姿と良さをさらっと描いている様に思える。
その分、構図とデフォルメのうまさが引き立って来る。
同じように構図とデフォルメを追求した写楽も良いのが出ていた。
これは写楽の「二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉」。
国政と比べると写楽の大首絵はある意味押し付けがましい所が感じられる。
写楽が描きたい姿をこれでもかと出している。
見る側としては「おーっ、写楽か・・・」と圧倒されて見てしまい、画そのものの世界に惹き込まれる。
それに比べて、国政は何処からとも無く芝居小屋のざわめきや、三味線の音が聞こえて来る様な感じがし、あたかも国政と一緒に芝居を見ているかの雰囲気になる。
そのへんが微妙に違う所です。
ああ、こうやって役者絵の名品を見ていると、歌舞伎を観に行きたくなる。
ちょうど今、四国の金比羅歌舞伎では市川海老蔵が「暫」を演じている。
桜吹雪の舞うこの頃、さぞきれいな舞台だろう!。
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