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2008年7月 8日 (火)

「色ー響きと調べ」京都市美術館コレクション展第二期

この展覧会の解説文には柳田国男を引いて「日本は元来色の種類に乏しく、色を表す言葉も、外来語を含めて少ない国でした。」とあるが、これは疑問に思う。

Img_kyoubi1古からの歌をみても、その言葉の表す世界は色彩豊かであって、藤末鎌初からの水墨画においては白黒の世界の中に多くの色を感じさせる要素を含んでいる。

桃山の障壁画や風俗画においては金襴豪華な色使いの中に時代の持つ不安感を感じさせる色相を想い起こさせ、江戸の浮世絵は当時の文化のにないてとなった庶民の「粋」の気質を知らしめる色調を含んでいる。当時の上方では写生を基とする画法から、物を描く為の色使いが感じられる。

太古から自然に親しんでいた我々は、その豊かな色調を感じる術をその心の襞に持ち、色彩に関する想いは他の国の人々より優るとはいえ決して劣るものではなかった。

明治以降、近代日本の絵画に現れた「色」は、決して突然に現れて来た物ではなく、また外来からの影響でもなく、綿々と奏で続けられてきた我々の感覚の響きと調べであるとおもえる。

そのような観点から見ていくと、今回のコレクション展、本当にすばらしい逸品が並んでおり、心から楽しめる美術展である。京都のこの地で奏でられて来た色のハーモニーの結晶の様な作品群が並んでいる。ため息のでるような色の響きである。

そんな展覧会の中から気に入ったものを。

Img_kyoubi6

これは竹内栖鳳の「雄風」。

二曲一双の屏風絵だが、その闊達な線、ぼかし気味に塗られた色相。うまいなぁ!
特に濃淡痩肥の線で描かれた虎の輪郭、これがすごい。虎が生きていますよ。
いまにも動き出しそうな感じ。
慣れたネコを抱いた時に感じる柔らかいがどっしりとした重量感みたいなものが伝わって来ます。

またこの虎、顔付が良い。まわりを威圧しながらもどこか小馬鹿にしたようなネコ科独特の顔付をしている。
この画を描く為に、多分栖鳳は岡崎の動物園へせっせと通い写生したんだろうな。

この画、画像のように平面で見ていても本当のすごさは伝わらない。やはり屏風立てで凹凸がある状態で見て、はじめてその本当の良さがわかり、ぼかしの効果、構図のよさが伝わってくる。
何回見ても、老練な栖鳳の腕に感心する画である。

Img_kyoubi2これは菊池契月の「南波照間」。

沖縄あたりの女性を描いた画だが、契月らしく押さえた美しい線で描かれている。
紅と黒の着物の対比が美しい。鼠色した着物の裏地に描かれた小さな模様が何故か印象に残る。

軽やかな色のハーモニーがやがて三線の音に変わっていく。

菊池契月はその他にも「紫馬(馬編に留)」「赤童子」の二点が出されていた。
このうち「赤童子」は初見だが、人間の血を思わせる様な紅で描かれた赤童子に契月のまた違った一面を感じた。

しかし、色使いが繊細な画家である。

Img_kyoubi4徳岡神泉「流れ」。

神泉の代表作の一つ。独特の抽象的な世界を描いている。
静謐で、神々しく、そして美しい世界。

神泉の描く抽象の世界を神泉自身は次のようにいっている。

「桜の花びらがひらひらと散る。散ってゆく花びらが地面に触れんとするとき、現実にその音は耳には聞こえないかもしれない。しかしたしかに音を知る。花びらでもなく、音でもなく、直観に置いて感得したこの知の世界、それを描きたかった。雑物のまじらない核心だけを画面に表現しようと思っていた。」

じっと対象を見つめ続け、それを心の中に沈め込みやがて浮かび上がって来る純粋な世界を描いている。色も純化され単純な色調ながら、深い思いを含んでいる。

ちょっと画の雰囲気とは異なる話だが、いままで何回となくこの画を見て来たが、この流れは画の右から左へ流れていると思っていた。今回近くでじっくりと見ると。筆の運びや、色の変化からどうも左から右へ流れているように思えた。次見る時はどちらに流れているのだろう?


Img_kyoubi5これは山口華楊の「鶏頭の庭」。

華楊というと黒い色が印象的な「黒豹」が知られているが、この鶏頭の赤も美しい。

すらっと伸びた鶏頭の花の伸びやかさと細密な描写で描かれた花頭の姿が、赤色の移り変わりで見事に描かれている。
後ろに描かれている庭石のぼかし方がこの花の美しさを際立たせている。
静かでは有るが、強い存在感を残す優品。

画像は無いが梶原緋沙子の画が3作品並んでいた。これも良かった。
「若き日」「赤前掛」「娘義太夫」。どれもが少し疲れた様な女の姿を描いている。その色調も重く沈み込むようで画の雰囲気をよく表している。

この画を美人画とするならば、思い当たるのが上村松園。
松園が女の「陽」の部分を描いたとすれば、梶原は女の「陰」の部分をこれらの画で描いている。
日常生活の中で溜まる澱のようなものを描いている。
それは生活に疲れた男の姿とはまた異なる女の「業」のような疲れと思われる。

これら以外にも多くのすばらしい京都画壇の画が並んでおり、京都市美術館ならではの美術展である。

特に、栖鳳の「雄風」の屏風絵としての迫力、目の前に広がる神泉の抽象世界(画像で感じられる以上に大きな絵です。目の前一杯に広がります。)、梶原緋沙子の沈んだ色調は本物の画を見て初めて感じられる感動である。

暑い日々が続きますが、ぜひ機会があれば、観に行かれる事をお勧めします。

*「色ー響きと調べ」 京都市美術館 コレクション展 第二期
 08/06/28〜08/08/31

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コメント

京都市美術館の夏のコレクション展では、涼しげな作品が並びますよね。

炎天下の日、ひんやりした美術館で目と身体を休めることができます。
この夏も何度か京都に行く予定なので、ぜひ訪ねてみます。

それにしても、この美術館の収蔵品の多さに驚かされます。

投稿: nao-mi | 2008年7月 9日 (水) 06時17分

nao-mi さんへ
今回も好きな画が揃っていました。
京美のコレクション展、私にとっては愛すべき美術展です。
訪れる人も少なく、自分自身の世界に浸りながらじっくりと画と対面できます。
出品されている画も、私好みの画が多いし。

この美術館で過ごす時間は、京都のの中でも最上の時間の一つです。
でも、考えれば私にとって京都での最上の時間というのはまだ色々あるわけで、京都に居てよかったと実感しています。

投稿: 好日 | 2008年7月 9日 (水) 20時53分

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