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2009年5月 4日 (月)

神泉苑大念仏狂言 「紅葉狩り」

念仏狂言の演目には念仏会や仏の教えから派生したものや、能狂言から派生して来たものがある。
(詳しくは過去の記事で)

今回の「紅葉狩り」は、能狂言から取り入れられたもので、その中でも最も初期の時代に取り入れられたとされている。

その分、他の演目よりも能狂言の要素が多くのこっており、幽玄さや優雅さが色濃く残っている。

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あらすじは、平維盛が深山へ狩に行き、その途中に不思議な美女と出会う。その美女がすすめる酒には毒がもられており、それを知らずに飲んだ維盛は眠りに落ち込んでしまう。謎の女は正体を表し、維盛の刀を奪い姿を消す。夢うつつの維盛は、夢の中でお地蔵さんに出逢う。お地蔵さんは維盛に謎の女は鬼である事を告げ、退治するようにと立派な太刀を授ける。

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夢から覚めた維盛の所へ、姿を消したあの謎の女が美しい打掛を被って現れる。お地蔵さんにその正体を教えられている維盛が、その打掛をはがすと形相すさまじい鬼が現れる。
そこで、維盛と鬼との戦いが始まる。
毒を盛られている維盛はどうも分が悪い。打ち込んで来る鬼の木杖をかわすのが精一杯。そんな維盛の様子を見て、鬼は高台にあがり様子をうかがう。乾坤一擲。維盛めがけて空中から襲いかかる鬼をお地蔵さんの加護により咄嗟にかわし切り返すと見事に手応えあり。
鬼は最後の断末魔をあげて紅葉の枝にしがみつく。そこへ維盛最後の一刀。見事に鬼を退治する。

というお話。

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艶やかさと優雅さとスペクタルの溢れた演目です。
思わず魅入ってしまう。

能では維盛に謎の美女の正体を告げるのが、武人の神である「武内の神」となっている。そこが地蔵尊となっているところが念仏狂言らしい。
そのお地蔵さんの姿が、なんとなく愛らしく、慈愛に満ちた顔をしている。
昔の人達はこのところでお地蔵さんが現れると、ほっと安心して手を合わしたりしてたのだろうな。

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維盛に切られて、鬼が紅葉の枝にしがみつく場面なんかは本当に鬼気迫るものが有る。
金色と朱の衣装、みずみずしい新緑の紅葉、黒々とした髪、赤黒い鬼の面、色彩的にもあっと息を呑む場面である。

この「紅葉狩り」が念仏狂言に取り込まれて行ったのは桃山から江戸にかけてだと思われる。
鎌倉時代にはまだ貧しかった庶民の生活が、応仁の乱を経てだんだんと力を付けて来て上流階級の好む能までその演目に取り込んで来た事は、当時の京都の様子が伺い知れるようで有る。

泥臭い一面や素朴な一面を魅せる念仏狂言のなかにも、このような優雅で鮮烈な美しさも持ち兼ねる念仏狂言。
いつまでも興味は尽きない。

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コメント

壬生狂言の大ファンで、現在京産大の特別客員研究員としてで身の程知らずにも研究テーマに壬生狂言を選んで勉強しています。ただ好きでたまらない、というだけなのですが、歴史や江戸時代の広がりなど調べているとおもしろいことも出てきますよね。今後はなかでも惹かれる「面」についてもっと詳しく知りたいなあと思っています。この「紅葉狩」のエッセーは、「アアよくぞ言ってくれた」と感動してついコメントしてしまいました。壬生狂言の中でも珠玉の完成度、美しさですよね!少なくともこの曲だけは能より壬生狂言のほうがいい!とつねづね思っている私です。
「お手伝い」をされているとのこと、地元の方なのでしょうか、毎年新幹線に乗って見に行く関東人にとってはうらやましい限りです。またいろいろ壬生狂言について教えてほしいです。

投稿: きつねこ | 2010年1月26日 (火) 12時34分

きつねこさんへ
壬生狂言面白いですね!
私は神泉苑狂言のお手伝いをしています。
小さい頃からそばにいますが、いまだにあの「カンデンデン」の鐘の音を聞くと気持ちがそぞろになります。
この2月には大阪難波の高島屋で「壬生寺展」が1日まで開かれており
猿の古面や狂言所縁の物が展示されてました。
2日、3日は壬生寺の節分会があり、また2月28日には京都会館で「第40回京の郷土芸能まつり 京都の念仏狂言」が催され、京都の4つの念佛狂言がそろって上演されます。
各狂言の共通点や異なる点が一度に見られて面白そうです。

また、春のシーズンにはぜひ神泉苑狂言も見に来てください。

投稿: 好日 | 2010年2月 2日 (火) 22時27分

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