カテゴリー「書籍・雑誌」の2件の記事

2007年2月 5日 (月)

『食べる西洋美術史』を読んで

『食べる西洋美術史』 宮下規久朗 (光文社新書)

Imgtabehon昨年来からの新書ブームで、毎月多くの出版社から何冊もの新書が出る。タイトルだけを見るとどれもこれも面白そうだが、なかなか表題と内容の面白さが一致するのは少ない。
そんな中から、この一冊。

レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の審判」から始まり、ポップアートのアンディ・ウォーホルの「最後の審判」まで、「食」という行為を通じての絵画の意味を説明する内容。

本書の構成は
第一章 『最後の晩餐』と西洋美術
第二章 良い食事と悪い食事
第三章 台所と市場の罠
第四章 静物画 ー 食材への誘惑
第五章 近代美術と飲食
第六章 最後の晩餐

作者の「宮下規久郎」氏は神戸大学助教授でイタリアを中心とする西洋美術史が専攻。
最近人気が出ているルネサンスの画家「カラヴァッジョ」を広めた先見者。

この本では、絵画のカラー写真も多く載せ、ルネッサンスからフランドル、スペイン、オランダ、フランス、そして近代の名画についてその絵の持つ宗教的意味合いや隠喩されるもの、作家のこめた意味を大胆にかつ緻密に展開している。特に、ルネサンスからフランドルに関する部分は特筆もの。

単なる美術史、絵画鑑賞の手引きの域をこえて、文化論、思想論に至っている。絵画を単なる美術品から、その時代の人間を表すものとして評価している。思想も因習も知らない国の美術品を見ても本当の意味の感動は得られない。やはり知識としてでもそれらの事を知っておいた上で鑑賞するほうがより楽しい。
そのへんの西洋絵画にたいする知識を、万国共通の「食べる」という行為を媒介することで、観る側はより確実に知る事が出来る。

そのへんの所を筆者は次のように述べている。
『人は臨終になったら、いったい何が食べたいと思うだろうか
食事こそはコミュニケーションの最大の手段であり、宗教と芸術につながる文化であった。人と人、社会と個人、文明と自然、神と人、罪と救い、生と死、それらすべてを結合させる営みが食事であった。また真の芸術は、単なる感覚の喜びなどではない。人間の生の証であり、宗教にも通じるものである。その意味において、食事と美術、さらに宗教は一直線につながっているのである。』(本文 エピローグから)

今年はダ・ヴィンチの「受胎告知」が日本にやってくる。それにあわせてルネサンス時代の絵画を見る事も多くなるだろう。その意味ではグッドタイミング。
ルネサンスの部分だけを読むだけでも充分価値が有る。

西洋絵画をより理解して見る為の好著である。私はこの様な本を待っていた!

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2006年9月15日 (金)

『街的ということ』を読んで

江 弘毅 『「街的」ということ —お好み焼き屋は街の学校だ— 』を読んだ。

Img_5関西の情報誌「ミーツ」の元編集長によるメディア論です。知り合いの人達に聞くと、案外読まれている。書店でも、ベストセラーにランクインしている。

この本を読んで気付くことは、「街」の捉え方が狭義である点だ。情報誌の元編集長であったことからか、基本的な視点が街=店=消費という図式で成り立っている。通常、我々が生活している街はもっと広義である。たしかに店も一つの要素ではあるが、それ以外に、街の風景、道行く人々、流れて来る匂い、色んな音等を感じ、街を楽しんでいる。その点については、著者もわかっており、本のなかでところどころ指摘はしているが、なにぶんこの本からは余り伝わってこない。あくまでも、本中の言葉で言う『街場(街の店)』の楽しみ方を示した内容である。そのような意味から、これはあくまでも作者の考える『価値ある情報雑誌の作り方』を示したメディア論である。

情報雑誌に関しては、私においては、「ミーツ」であろうと「Leaf」であろうと余り差はない。たまにカフェなんかに置いてあるのを見る程度である。それよりもブログで読んだ情報のほうが情報の精度は高い。情報雑誌のライターの顔は見えないが、ブログの作者は、過去ログをいくつか読めば感じはつかめて来る。そしてその情報の精度がわかってくる。そのような現状から見れば、情報雑誌の内容は、この本に書かれている、顔も見えないライターの思い入れが強い記事よりも、多くのカタログ化された情報のIndexの方が便利ではないかと思える。

『街的』という言葉が、街の楽しみ方(街の感じ方)という意味であるならば、それは千差万別であり、個人の考え方、個人の歴史、経験によって異なって来る。そして、その街が気に入らない人は、その街に行かないし、気に入れば街を楽しみにいく。その結果街の様子も変わって行く。店においても街に同化することねらった店もあれば、街から遊離することをねらう店もある。その中で寂れる店も有れば、栄える店も出て来る、そしてまた新しい店ができる。これらの変化を感じることが街を楽しむ事ではないだろうか。

この本は、『街』ということを色々と考える、きっかけとなった。

書名:「街的」ということ
作者:江 弘毅
出版:講談社 現代新書   ¥720


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